飼い猫に10年間毎日、注射をしなければいけなかった話

その猫は捨て猫でした。ある晴れた日の秋の日のことです。日課の朝の散歩をしていた私は家の近くのゴミ捨て場で、お刺身のパックに乗せられて捨てられている小さな猫を見つけました。猫好きの私はその場でこの白黒の痩せた子猫を飼うことを決意し、すぐに家に連れて帰りました。汚れていた毛も綺麗にして、食事もきちんと与えた結果みるみる猫は大きくなりました。しかし猫が4歳になった時、猫が体調を崩しました。食欲もなく、下痢気味で痩せてしまった猫を慌てて獣医に連れていきました。診断された病名は腎不全でした。一度この病気にかかるともう治らないこと、進行を遅らせるためには毎日皮下注射を行わなくてはいけないこと。真っ白になった頭で獣医の説明をきき、その日から猫と私の闘病生活がはじまりました。暴れる猫を膝に抱え込んで注射をすると、爪を立てながらフーフーと唸り嫌がります。注射を始めてからは猫が私の膝に乗ってくつろぐことはなくなりました。始めはいつ猫が死んでしまうかわからないため精神的にも辛い上に猫にも嫌われていく状況が恨めしくてたまりませんでした。注射もスムーズにできず、猫に無用な痛みを与えてしまうこともありました。しかし徐々に私も猫も慣れていき、10年目には唸りはするもののおとなしく注射を受け入れてくれるようになりました。
最期の時、それまで動かなかった猫がふらふらと立ち上がりました。そんな猫を抱き上げ私の膝に乗せると、猫は唸りもせずただそこに座って私の右手をぺろりと舐めました。涙が止まりませんでした。